今回は抗凝固薬のヘパリンが起因の血小板減少症(HIT)についてまとめていきます。
HITはⅠ型とⅡ型に分類されますが、臨床的にHITはⅡ型のことを指します。Ⅱ型について紹介していきます。
- 発症
ヘパリン投与5~14日後(透析導入期に多い) - 機序
ヘパリン依存性抗体の出現 - 血小板数
元の30%~50%の減少 - 合併症
動静脈血栓(心臓、脳、下肢、肺) - 頻度
0.5~5% - 経過と治療
ヘパリンの中止で回復し、アルガトロバンへの抗凝固薬変更
HITの作用機序
HITの原因はヘパリンがトリガーとなったことによる血小板減少です。
実際はヘパリンが血管内の血小板第4因子(PF4)と免疫複合体を形成することによって、この複合体(ヘパリン+PF4)に対する防御反応(Bリンパ球)による免疫疾患になります。
①~⑧までの過程でトロンビン産生が活発化することでHITが発症します。順を追って見ていきます。
体内にヘパリンが投与されるとPF4との免疫複合体が形成されます。
①で形成された免疫複合体を抗原とみなし、Bリンパ球からHIT抗体が産生されPF4/ヘパリン/HIT抗体の免疫複合体が形成されます。
②で形成された免疫複合体が血小板を活性化します。活性化された血小板から大量のPF4とマイクロパーティクルという凝固因子が放出されトロンビン産生より、血小板減少と血栓形成が起こります。
内皮細胞上でヘパラン硫酸とPF4の免疫複合体を形成し、それに対してBリンパ球がHIT抗体を産生することで内皮細胞を活性化。最終的に組織因子が発現します。
③で形成された免疫複合体はマクロファージにも作用し、組織因子を発現させます。
①~⑧の過程で発現したトロンビンや組織因子は凝固カスケードの順番で凝固を促進していきます。この凝固連鎖はトロンビンの嵐とも呼ばれ、過剰に産生されたトロンビンを処理することが治療の目標となります。
HITの治療
ヘパリン投与後5日以降にHITを強く疑われた患者ではヘパリンを直ちに中止、抗トロンビン剤により過剰産生されたトロンビンを処理することが必要です。
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